失踪宣告(しっそうせんこく)とは、行方不明者を法律上で亡くなったことにする制度で、これを使うことによって、相続をしたり、死亡保険金の請求、離婚をすることもできます。
「妻がいなくなって7年が過ぎた」「夫が乗っていた船が沈没して1年が過ぎた」などに当てはまる人は失踪宣告をすることができます。失踪宣告は亡くなったことにする制度なので、一見かなり重い制度のように思われるかもしれませんが、もしも行方不明者が見つかった場合には取り消しする方法もあるので安心してください。
今回は、失踪宣告の手続方法と失踪宣告の取り消し方法の2点についてお伝えしていきます。
捜索願を出してもほとんどのケースで探してはもらえません。
調査員が20年以上のベテラン精鋭揃いで業界トップクラスの「綜合探偵社MJリサーチ」にまずはご相談ください。
・電話、メールでの相談可能
※ストーカー等、犯罪性のある調査依頼は請けかねますのでご注意ください。
・24時間、365日対応
・安心の料金設定
目次
失踪宣告の要件と2つの種類
失踪宣告には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。まずは2つの違いについて説明していきます。
普通失踪とは?
行方不明者がいなくってから7年が過ぎることで申請できる制度で、手続は家庭裁判所で行います。手続の流れ・方法については「失踪宣告の申立手順とその方法」を確認してください。
(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
【引用:民法第30条】
特別失踪とは?
普通失踪とは違い1年が過ぎることで失踪宣告をすることができます。条件は、行方不明者が乗っていた船が沈没した・戦争に行ったなどの危難に巻き込まれることです。
(失踪の宣告)
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
【引用:民法第30条】
失踪宣告による3つの効果
失踪宣告をすることにより以下の効果を受けることができるようになります。
- 行方不明者の財産を相続することができる
- 行方不明者の配偶者は離婚をすることができる
- 行方不明者を亡くなったことにより保険金を受け取ることができる
失踪宣告をすると法律上亡くなったことになりますので、死亡した人と同じ条件の効果を受けることになります。
失踪者の財産を相続できる
市区町村に失踪届が提出されることによって、相続人に財産の引き継ぎができるようになります。財産というのは、大きく分けて土地・預金・有価証券などです。
相続される人は、
- 第1順位:配偶者+行方不明者の子供
- 第2順位:配偶者+行方不明者の父母・祖父母
- 第3順位:配偶者+行方不明者の兄弟姉妹
が当てはまります。
【参考:相続人の範囲と法定相続分|国税庁】
離婚できる
7年経たないと失踪宣告はできないとされていますが、離婚は3年が過ぎると地方裁判所に提訴することで公示送達(※)によってすることができます。今後の生活が不安という方は3年が過ぎたら離婚するのもひとつの手でしょう。
中には3年も待てないという人もいると思います。相手に悪意の遺棄があると分かるなら3年待つ必要がありません。この悪意の遺棄というのは、浮気相手の所に行く、家庭のことを一切行わずに長い期間家出するなどが当てはまります。
(※)公示送達…相手が知ることのできない場合や居場所が分からない時にする手続
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
【引用:民法第770条】
保険金を受け取ることができる
行方不明者の健康保険料・住民税などは市役所で行方不明の事実を伝えることで支払いの義務はなくなりますが、保険金の支払いはやめないでください。
保険金を受け取るには、失踪届が認められた後でないと受け取ることができません。支払いは7年あるのでキツイかもしれませんが、途中でやめてしまうと保険金が受け取れなくなってしまうので注意が必要です。
失踪宣告の申立手順とその方法
失踪宣告をするために必要な書類・費用を紹介していきます。
失踪宣告をする流れ
行方不明者がいなくなって7年が過ぎると家庭裁判所に失踪宣告の申し込みができるようになります。必要書類を書き、申し込みをすると家庭裁判所が申込者・不在者の家族などを調査。その後、公示催告(※)がされます。
(※)公示催告…公報・新聞・官報・裁判所の掲示板
普通失踪だと6ヶ月以上・特別失踪だと2ヶ月以上で公示催告が一般公開されます。
上記の期間を過ぎても行方不明者の情報が手に入らない場合に、失踪宣告を認めたかどうかの審査結果の連絡が来ます。失踪宣告が確定したら家庭裁判所に確定証明書を申請してください。その後に、市区町村に失踪届の手続をし、行方不明者の戸籍を死亡に変更することができます。
【参考:失踪宣告の手続とは…|裁判所】
失踪宣告ができる対象者
失踪宣告を申し込める人は以下の利害関係人です。
- 行方不明者の配偶者
- 相続人(※1)
- 財産管理人
- 受遺者(※2)など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係がある人
(※1)相続人について知りたい方は「相続人の範囲と法定相続分|国税庁」を参考にしてください。
(※2)受遺者…遺言によって財産を受けることができる人
【参考:失踪宣告|裁判所】
失踪宣告をする時に必要な書類
失踪宣告をする時に必要な書類は以下です。
- 失踪宣告をする申込書(家事審判申立書|裁判所・記入例|裁判所)
- 行方不明者の戸籍標本
- 行方不明者の戸籍の附表
- 行方不明だということを証明する書類(捜索願など)
- 行方不明者との失踪宣告をする申し込み者との利害関係を証明する書類(戸籍標本など)
【参考:失踪宣告|裁判所】
失踪宣告をする際の費用
失踪宣告をする時には費用がかかります。
- 収入印紙800円
- 連絡用の切手代(申込をする裁判所によって変わる)
- 官報広告料4,816円
【参考:失踪宣告|裁判所】
失踪宣告する時の注意すべき2つのこと
失踪届を提出するには期限がある
失踪宣告ができることが決まったら確定証明書を家庭裁判所に提出します。
注意すべき点は、10日以内に失踪届を市役所に提出しないと失踪宣告は認められません。
行方不明者が生きていた場合は失踪宣告が認められない
7年間行方不明であっても、家庭裁判所が調査をする時に行方不明者が発見された場合は失踪宣告が認められないので注意が必要です。
失踪者が見つかった場合は失踪宣告を取り消すことができる
「失踪宣告をしてしまったけど行方不明者が見つかった」
このような場合は失踪宣告の取り消しができます。
失踪の取り消しの方法
失踪申告を取り消すには本人か上記で説明した利害関係がある人なら家庭裁判所で行うことができます。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
【引用:民法第32条】
失踪宣告の取り消しを行うことで生じる3つの問題
失踪宣告を行うことで受け取ってしまった保険金や財産、再婚した場合の問題はどうなるのか説明していきます。
受け取った保険金は返還する
使ってしまった保険金は返還する必要はありませんが、手元に残っている分の保険金は保険会社に返還しないといけません。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
【引用:民法第32条】
失踪宣告をした後に再婚をしてしまった場合
再婚した状態で行方不明が見つかった場合は重婚になってしまうので、どちらか選ばなくてはなりません。行方不明者が生きているのを諦めて再婚した場合は後から結婚した人と夫婦になります。
しかし、意図的にどちらかが身を隠していた場合には再婚は認められません。どちらかが行方不明者は生きていると知っているのであれば、再婚は取り消しになります。その場合は、行方不明者と夫婦関係に戻ります。
財産は返還する義務がある
失踪宣告の取り消しをするということは、生きているということなので相続人に引き継がれた財産は行方不明者に返還する義務があります。
ただし、利益を得た分しか返還してもらえません。利益を得た分というのは引き継がれた財産によって生活に余裕ができた分のことです。
パチンコ・宝くじなどのギャンブルなどでなくなってしまった財産は、利益を特に得ていないので返還してもらうことはできません。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
【引用:民法第32条】
まとめ
行方不明になった人のことは諦めることはできませんが、失踪宣告をすることで財産・保険金を受け取ることができます。また、離婚もできるので将来のことを考えた場合に再婚をするのもひとつの方法です。
失踪宣告は残された人に恩恵がある制度です。行方不明者の分まで生きるために、失踪宣告は使うのをおすすめします。
24時間相談可能 | 相談・見積無料 |
即日調査可能 | 年間相談実績3600件以上 |