「家族が行方不明になったらすぐ失踪届を出さないと!」一見何も違和感のないように思えますが、実は意味合い的にはかなりおかしなセリフとなっています。なぜなら捜索願と失踪届は似たニュアンスでもその意味は全く異なるからです。
この記事では捜索願と失踪届の違いについて紹介しますので、それぞれの正しい意味を把握しておきたい場合は、ぜひ参考にしてみて下さい。
この記事の監修者
振り込め詐欺や銀行員の巨額横領事件などの捜査を担当してきた元知能犯刑事。警察署勤務時代は幅広い事件を担当。 |
捜索願を出してもほとんどのケースで探してはもらえません。
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目次
行方不明者届(旧捜索願)と失踪届のそれぞれの意味
行方不明者届(旧捜索願)の目的は人探し
捜索願は行方不明者を探し出したい時に警察へ届け出るものです。「家族がいなくなったからすぐ見つけないと!」という状況では、失踪届でなく捜索願を提出しようと言うのが正しい意味合いであると言えるでしょう。
ちなみに、捜索願とは古い名称で現在では行方不明者届と呼ばれています。平成21年の『行方不明者発見活動に関する規則』によって名称が変更になりました。
正式な名称が変わっても、まだ広く一般では「捜索願」という名称になじみがある方も多いので、この記事では「捜索願」として解説していきます。
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捜索願とは|捜索願の届出方法と不受理になるケース
失踪届の目的は死亡届
失踪届は、行方不明になり連絡が取れなくなった人を法律上で死亡者扱いにしてもらいたい時に市町村の役場に届け出るものです。
「行方不明者の保険金を受け取りたい」「行方をくらました配偶者と離婚をしたい」など、死亡後の手続や本人不在で進行できない手続をする際に届け出ます。
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失踪届の基礎知識
失踪届が提出できる条件
失踪届を提出するためには、まず家庭裁判所に審判を申し立てて失踪宣告を受ける必要があります。失踪宣告が受けられる条件に該当するのは下記のいずれかの状況です。
- 家出や蒸発により7年間生死不明
- 戦争・災害・事故により1年間生死不明
失踪宣告を受けたら失踪届を提出する権利が認められ、家族でなくとも下記の失踪者と利害関係にあると判断される者なら誰でも手続を進めることが可能です。
- 行方不明者の配偶者
- 相続人
- 財産管理人
- 受遺者
死亡届の種類
失踪届の他、失踪宣告を受けずとも行方不明者を死亡者扱いにしてもらえる「認定死亡」という制度があります。
認定死亡とは、水難・火災・その他の事変により死体は見つからなくても確実に死亡したと判断できる状況で官庁・公署に死亡を認定してもらう制度です。
基本的な意味合いは失踪届と同じですが、認定死亡は死亡と『推定』し、失踪届は死亡と『みなす』ものです。認定死亡の方が認定までの期間が3ヵ月と短く、後から失踪者の生存が確認できた時の修正手続も手間が少ないのが主な違いと言えるでしょう。
後から生存が発覚した場合は
失踪届の後に行方不明者が見つかった場合は、本人もしくは上記の利害関係にある人が家庭裁判所に申請をすれば失踪宣告の取消が可能です。
ただし、失踪宣告の取消は「取り消してください」とお願いすれば簡単に受理されるわけではありません。失踪宣告を取り消すための審判を申し立てる必要があり、すぐには取り消してもらえないのです。
もし、手続が面倒で失踪宣告を取り消さないままでいると、法律上では「死者」として扱われてしまいます。社会生活が不自由になってしまうので、弁護士に相談してすぐに取消を申し立てましょう。
ここで少し気になるのが「死亡保険金」の扱いです。
失踪届・認定死亡によって法的に死亡したことになれば、財産の相続や死亡保険金の受け取りも可能になりますが、後になって生存していたと判明すればお金を返さないといけないのでしょうか?
実は、一度支払われた死亡保険金は、生存が分かった場合は返還するのが基本です。ただし、生存が判明するまでにお金を使っていた場合は、使ってしまった分まで返還する必要はありません。
大切な人の消息が掴めない、生死が不明という辛い事態から得たお金のことなので、喜ぶべき話ではありませんが、もし失踪届・認定死亡の後で生存が判明してもお金の面でトラブルになることはないと覚えておきましょう。
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捜索願を出してもほとんどのケースで探してはもらえません。
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行方不明者届(旧捜索願)の基礎知識
捜索願を利用できる状況
捜索願が提出されると警察は一般家出人と特異行方不明者のどちらかに分類しますが、迅速な捜索を期待できるのは行方不明者が特異行方不明者に該当する場合です。
特異行方不明者とは、老人や幼児といった自分の意思で家出を考える可能性が低い者・保護者の許可を得ずに行方をくらました未成年・自殺の可能性が疑える者など、事件性が高いと判断される行方不明者を意味します。
成人が自らの意思で行方をくらませた場合は、一般家出人として扱われ、捜索の対象内ではありますが、積極的に探してくれません。実質的には捜索願が利用できるのは、特異行方不明者に該当する場合かどうかで判断をすると良いでしょう。
捜索願の依頼が認められている人
捜索願は行方不明者と以下のいずれかの関係に該当する者だけ届出ができます。
- 親権者
- 配偶者
- 後継人など親族や監護者
- 行方不明者の福祉に関する事務に従事する者
- 同居人
- 恋人
- 行方不明者の雇用人
- 行方不明者と親密な関係にある者
誰にでも捜索願が提出できるようにしてしまうと、闇金業者の取り立て、ストーカーやDVの加害者といった不法行為を目的とする人探しにまで警察が加担することになります。
警察の捜索はあくまでも「市民の生命・身体・財産を守るための手段」なので、このように届出が可能な人を限定しているのです。
捜索願が拒否されるケース
捜索願を提出できる人からの届出であっても、下記の2つの状況に該当する場合は捜索を拒否されることがあります。
- 失踪宣告書が残されている
- 不受理届が提出されている
失踪宣告書とは、「しばらく家を離れるので探さないで下さい」といった書き置きのことです。これが残されている場合は本人の意思による行動であると判断されてしまい、積極的な捜索は期待できなくなります。
失踪宣告書は、家出人があらかじめ警察に「捜索願が提出されても相手に居場所を教えないでください」と申請する手続のことです。この手続が受諾されていた場合は捜索願を提出しようとしても受理してもらえません。
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捜索願で探せない時は
個人で捜索に取り組む
家族の家出であれば近況の行動・発言や行方不明者の性格から行き先の手掛かりを推測できるので、警察に捜索を依頼するよりも個人で調査をした方が早く発見できる可能性があります。
住民票を調べてみたりインターネットを活用したりなど、個人でもできる捜索は色々とあります。個人で人探しを検討している方は、他の記事でも詳しく紹介しているので参考にしてください。
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人探しの方法10選!誰でも無料でできる方法と探偵に依頼した際の料金
探偵に人探しを依頼する
探偵は警察と違う組織なので、依頼をすればすぐに調査に取りかかってくれますし、犯罪行為が疑われるような状況でない限りは基本的には断られることはありません。
費用はかかりますが、失踪先の疑いがある全国各地の聞き込み調査や行方不明者と関わりの深い人物の張り込みなど、プロの経験を活かし的確に調査を進めてもらえます。行方不明者をなんとしても早く見つけたいという場合には探偵への依頼を強くおすすめします。
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まとめ
捜索願は人探しの手続で、失踪届は法律上の死亡を認めてもらうための手続です。似た用語ですが意味は大きく違います。
「行方不明になった人を見つけ出したい!」という時に申請するのは捜索願なので、実際に届け出る前に自分が条件に当てはまり申請すべき状況なのかを確認しましょう。
実は、警察署で「失踪届を出したい」と言っても、捜索の受け付けをしてもらえることはあります。
もちろん、役所でも「行方不明になってしまった」と言えば、失踪届のことを教えてもらえます。
究極的には、用語の使い分けは重要ではありません。大切な人がいなくなってしまったら、まずは警察・探偵事務所に相談して、早急に居場所を掴むように努めるのが大切です。
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